どんな料理にも必ずといっていいほど登場する油。お味噌汁に代表されるような和食の汁物などでは使わない場合もありますが、日本を飛び出せば多くの料理で油は必須でしょう。
そんな料理の影の主役とも言える調味料について、本記事では深掘りしていきたいと思います。結論、油をマスターすると、料理の質がグッとあがります。是非最後まで呼んでみてください。
油は何種類持っていますか?
日本のスーパーで必ず売っている油といえば、「サラダ油」「ごま油」「オリーブオイル」でしょうか。油の種類といえば、他にも荏胡麻油やコーン油、ココナッツオイルなど様々な種類があります。料理によって多少異なる・例外はあるという前提のもとではありますが、多くの場合その役割は似ています。
なので、本記事では油の種類に関わらず同じような役割で使用される食用油をまとめて「油」と表記します。
油の役割 その① -食材に火を加える
揚げ物?と思うかもしれませんが、そうではありません。
例えばお魚やお肉の塊をフライパンで焼く際、中まで火が通っているかの見極めは簡単では無いと思います。生焼けを防ぐために蓋をしてしまうと言うのも1つですが、油を使って四方八方から加熱するという技術を身につければ、表面をパリッと仕上げることができますよ。
ポイントは、火入中はスプーンで油を回しかけると言うこと。フライパンの中の油はとても熱いです。なので、この油を食材へ回しかけ続けることでフライパンに接していない面から熱を加えることができます。そのためには、「フライパンに薄く油を引いた」だけでは油が足りないのです。
これはポワレやソテーという調理方で、「油を介して火を入れる」という考えを基本としています。細かい点は割愛しますが、油が少なすぎるとフライパンに接している面のみの火入れとなり、特にお肉や魚などは生焼けの原因となる事を覚えておいてください。
油の役割その② - 風味を移す
油は風味や香りを保持することができます。「香味油」や「葱油」などは聞いたことがあるのでは無いでしょうか。ネギや香味野菜を油でじっくり炒めると、その香りが油に移ります。その油を調味料として料理に使うことで、料理が一気に風味豊かになります。
その原理は「脂溶性」の成分が油に溶けているからです。スパイス類の辛味や香り成分は脂溶性であり、また玉ねぎやニンニクに含まれるアリシンという成分も脂溶性です。
このような脂溶性の成分をもつ食材は、「油に香りや風味を移して使用する」という事を覚えておいてください。
パスタソースのニンニクや、カレーのスパイスを油で炒める際に、「どれくらい炒めたらいいんですか?」という質問をよく見かけます。もちろん生のニンニクは避けたいところですが、こういった手順の多くが「オイルに香りを移す」ことを目的としています。なので、答えは「香りが移るまで炒める」と言うことになります。
なかなか抽象的ではありますが、焦げなければどれだけ炒めても問題ありません。焦げの香りは料理に残ってしまうので、特別な理由がない限り、それだけは避けましょう。
油の役割その③ - コクを生み出す
意外と忘れがちな役割が、「コクを出す」といこと。例えばアマトリチャーナ(トマトソースのスパゲッティ)を作る時、私は2人分で大さじ3ほどのオリーブオイルを使用します。
和食で考えるとあり得ない量の油を入れることになりますが、この料理には必要です。カレーを作る際も同様に、2人前あたり大さじ3〜4ほどの油を入れます。
油をコクとして利用するもので、身近なものであればドレッシングがそうです。ノンオイルのドレッシングにはおそらく出汁や醤油、チーズなど旨味の強い調味料が使われていると思います。一方でシンプルなイタリアンドレッシングであれば、オリーブオイルと塩、ビネガーで充分美味しいドレッシングができます。
このように何か旨味を補う調味料が別で入らない場合に、油というのはとても重要な役割を果たしてくれます。
番外編:塩
番外編となりますが、油と同じくらい塩も、料理においてとても重要な役割を果たします。
なぜなら、塩味(えんみ)は人が旨味を感じるかどうかに影響しているからです。言い換えると、「塩味(しおあじ)が美味しい」のではなく、特定の塩分濃度によって「美味しいと感じられる」ということです。
実際に塩分濃度と旨味の相互作用の研究もあり、同じ旨味成分の割合でも塩分濃度が変われば、美味しい/美味しくないと感じることがあり、且つ旨味成分だけでは人は美味しいと感じないようなのです(三橋富子・野村歩 2015 日本大)。
つまり、料理ができあがって味見をした時に、「何か物足りない」と感じたときには塩味を疑ってみてください。化学調味料を使わない限り、食材本来の旨味成分を後から追加することはできませんが、塩分濃度を調整することでその感じ方を変えることができるかもしれません。ただ、一度追加した塩は取り除くことはできませんので、くれぐれも入れすぎには注意しましょう。
まとめ
今回は油(番外編として塩)という、どの家庭にもある基本調味料について深掘りしてみました。基本的な調味料だからこそ奥が深く、難しいと感じたかもしれません。
ただ、本記事の内容がいつものレシピに理由を見つける手がかりになれば幸いです。
なんとなく炒めていたニンニクも「香りが出てるかな」と考えながら炒めてみたり、いつも入れている塩の量をちょっと変えて味見してみたりなど、チャレンジを積み重ねることで「料理」の楽しみ方がまた1つ増えると思います。
ややディープな内容でしたが、少しでも毎日の料理の参考になれば幸いです。